死因究明制度 厚労省第三次試案の法案化に反対し、第四次試案の検討を望みます。


先日CBニュースに上がった記事が突然削除されていました。どこから圧力がかかったのでしょうか。
魚拓にキャッシュが残っていますが、ここでも取り上げます。


法案提出に関しては、舛添厚労大臣が今国会での法案提出はしないと語ったとのことですが、より一層の検討により、不当な刑事介入を防ぐための第4次試案を求めます。


超党派私案に遺族が賛同―死因究明制度


 超党派の「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」幹事長の鈴木寛参院議員は5月25日、東京都内で講演し、厚生労働省が創設を検討している、「医療安全調査委員会」(医療安全調、仮称)設置を柱とする死因究明制度について、同議連から今後提出する対案の私案を示した。医療安全調の中央委員会を内閣府に設置し、死亡診断書や死体検案書などの発行ができた場合は、医師法21条に基づく警察への届け出を不要とするなどの内容だ。これに対し、都立広尾病院の医療事故の遺族、永井裕之さん(「医療の良心を守る市民の会」代表)は、「良い案だと思うので応援したい。(私案を)もっと公開して議論していくべき」と、賛同する考えを表明。これまで第三次試案について「患者側から賛同を得ている」との見方を示してきた厚労省は、厳しい対応を迫られそうだ。(熊田梨恵)


 鈴木議員は、患者と医療者双方の要望について、「患者側は、納得がいくまで病院内や第三者機関で真相を究明してほしい。医療側は、刑事当局の医療現場への介入のルールを明確にしてほしい。患者側は行き場がないから、やむを得ず警察に行っているだけで、医療者の逮捕や立件を望んでいるのではないのだから、両者に対立点はない」と説明。その上で、厚労省の第三次試案について、「医療者と患者は良いパートナーであるべきなのに、対立構造をわざわざ引き起こした」と、政策立案の手法が間違っていたと指摘した。解決すべき問題としては、▽正義ある公正な解決のために、真実・原因を究明するための患者・遺族と医療者側の適切な対話▽再発防止▽委縮医療−を挙げ、「これらは予算や政治的決着の話ではないので、痛み分けというやり方で済む問題ではない」と述べた。


 その上で、解決策としての最も重要なのは「医師数、医療費の増と臨床医師の離職防止」とした。死因究明制度については、医師法21条に関連する罪刑法定主義と刑法構成要件論を理解した上での制度設計になっていないことが問題とした上で、「医師法21条の構成要件が、主観的判断に基づいているのが最大の問題であるため、客観的構成要件に修正する。死亡診断書の発行が客観的行為となるので、それをもって届け出る・出ないのメルクマールにすることが政策技術上必要。現在は死亡診断や死体検案がずさんなため、的確な死亡診断をしなければならない」と強調した。
 現在の医師法21条に基づく異状死の届け出が、死体か妊娠4か月以上の死産児を検案した医師の主観的な判断によるものであることから、客観性を持たせるために、医療機関内の死亡事例については、病理解剖や死亡時画像診断(Ai)を活用して的確な死亡診断を行うようにするとした。医師は治療中の患者の死亡や、死因が診療にかかわる事故であるときは死亡診断書を、かかわらないものであれば死体検案書を、死産児の場合は死産証書を作成する。医師法21条に基づく届け出は、死体や死産児に異状があり、これらの書類を作成できない場合に限定した。このため、刑法160条の虚偽診断書作成罪を厳罰化するとした。


 また、医療安全調の目的を医学的な原因究明とすることで、原因究明と再発防止をそれぞれ別の組織が担うとする部分で、「原因究明、再発防止、医療安全の確保」というそれぞれの目的をすべて医療安全調が担うとする厚労省の医療安全調設置法案の原案と一線を画している。さらに、日本医療機能評価機構が実施している医療事故情報収集制度を強化し、全例を届け出にしてデータを収集・分析することで、再発防止や医療安全の確保に役立てるとした。


 設置場所については、内閣府に中央委員会を置き、都道府県ごとに地方委員会を置くとした。地方委員会の調査チームが医療事故の調査報告書を作成する。中央委員会を内閣府に置くことで、厚労省行政処分手続きとは切り離すとした。このため、遺族からの申し立てがあれば、調査報告書は刑事・民事訴訟の手続きに利用することができるが、行政処分には使えない。鈴木議員は「患者遺族の刑事告発権、賠償請求権はみじんも縛ってはいけない。罪刑法定主義の観点から、そもそも明確な立法でなければそれはできないし、そのような立法はすべきでない。また、業務上過失致死罪からの医療行為免除は、現段階では時期尚早」と述べ、刑事免責については今後十分な議論が必要とした。


 医療安全調の地方委員会に届け出る医療事故の対象は、医療従事者や患者・家族が調査を望んだ事故とし、患者や家族、医療従事者から申し出ることができるとした。患者や家族は、調査報告書に納得がいかなければ、何度でも他の都道府県の地方委員会に申し立てることができ、質問も可能だ。解剖については、厚労省の原案は遺族の確認が取れない場合は医療安全調の判断で可能としているが、私案は遺族の承諾を求めている。また、病院内に原因究明委員会を設置し、患者や家族を支援するための仲介役の設置を制度化するとした。


■「患者・家族に配慮した良い案」


 講演終了後、聴講者が鈴木議員を囲み、死因究明制度や医療安全調に対する考えを約30分間にわたって質問した。この中で、1999年に都立広尾病院で起きた医療事故の遺族で、「医療の良心を守る市民の会」代表の永井裕之さんは、「患者や家族側に配慮されていて、いい案だと思うので、もっと公開して議論してほしい。ぜひ頑張っていってください」と鈴木議員を激励した。

 永井さんはキャリアブレインの取材に対し、「厚労省の第三次試案は、調査報告書が刑事や民事訴訟に使える部分などが残っており、医療者からは反対も出ると思う。鈴木議員の案は、遺族が求めるものから大きくぶれてはいないし、あれで進めてくれるなら、彼に預けてやっていってほしいと思う。前に進んでいくことが必要なのだから、こうしていろいろな案が出てきて、さまざまに議論が深められて、よりいいものになっていく、そういう段階に来ているのでは」と語り、私案によって充実した制度になることへの期待感を表明した。


■解剖への遺族の承諾で、厚労省案と相違


 厚労省が制定を目指している「医療安全調査委員会設置法」の原案では、地方委員会は医療事故調査を行うために必要であると認めたときに遺族の承諾を受けた上で、死体や死胎の解剖が可能としている。しかし、「死因を明らかにするため解剖を行う必要があり、かつ、その遺族等の所在が不明であり、または遺族が遠隔の地に居住する等の理由により、遺族等の諾否が判明するのを待っていてはその解剖の目的がほとんど達せられないことが明らかであるときは、遺族等の承諾を得ることを要しない」とした。一方、鈴木議員の私案はあくまでも遺族の承諾を前提としている。永井さんは「これ(遺族の承諾なしの解剖)はやってはならないこと。遺族の気持ちとして納得がいかない」と述べた。


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 厚労省はこれまで、第三次試案には患者側や学会などからも賛同を得ているとの見方を示していた。しかし、医療安全調の設置を強く求め、第三次試案に賛同していた遺族側が、現行の医師法21条の構成要件のあいまいさを是正することで、不当な刑事介入や立件を防ぐとする鈴木議員の私案に賛意を示した。医療系学会でも、日本医学会で近く各学会の意見を取りまとめようとする動きが見られ、舛添要一厚労相与野党すべてが合意する案を求めている。鈴木議員は「最大の犠牲者は患者。第二の犠牲者はハイリスク症例担当医」と講演の最後を締めくくった。永井さんは「遺族が納得のいく制度にしてほしい」と、さまざまな意見による議論の深まりを期待している。死因究明制度の創設に向け、状況は刻一刻と変わりつつある